アートブームの光と影なぜ 日本では「有名な画家、有名な音楽」ばかり人気があるのか?
Column|2026.10.19
Text_kotaro sakata Photo_kotaro sakata
9月に北のモナ・リザと言われるフェルメール作『真珠の耳飾りの少女』が大阪に来た。チケットは公開前から争奪戦となり転売ヤーの餌食となった。皆さんが大好きなフェルメールだ。
私が知っているのは、『青いターバンの娘』と言われていた頃で、オランダでは人気があったが、日本ではそれほどでもなかった。フェルメールは、死後200年も忘れ去られ、最初に『真珠の耳飾りの少女』が売られた時の値段は今の貨幣価値に換算して13,000円程である。しかし、19世紀に入り、修復が行われ、小説人気に火が付き今では一瞬見ることさえ貴重な絵画となってしまった。
作品を所蔵している、オランダのデン・ハーグにある「マウリッツハイス美術館」は、全館修繕に入るタイミングで作品を国外へ貸し出した。多分、私が生きている間はもう来日しない
だろう。本家の『ラ・ジョコンダ』(日本ではモナ・リザ)も近日ジョコンダ部屋が出来て、ルーヴルの入館料と別にラ・ジョコンダ拝観料が課されるとのこと。かなり昔の事になるが、ルーヴル閉館後に館を貸し切り、ラ・ジョコンダの前で食事会のイベントを行ったことがあったのが懐かしい。今では想像もつかない。
これは苦言ではないが、東京には、あまり知られていないだけで、黒田清輝やツグハルフジタなどのとんでもない名画、クラシック音楽やオペラなど、世界最高水準の作品が溢れている。この『ラ・ジョコンダ』が一回だけルーヴルを出て、展示されたのは東京である。
しかし、ここで知られざる名画、クラシック音楽やオペラを紹介してもなかなか興味を持っていただくのは難しいだろう。そこで、今月から始まるこれまた名画展を紹介して、皆さんを行
列に並ばせてしまおうといういじわるな原稿をお許しいただきたい。
まず、ミレー作『落穂拾い』とクロード・モネらの作品が展示される「東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵いまを生きる歓び」展が東京都美術館(上野公園)で開催され
る。
また、「ルーヴル美術館展 ルネサンス」にて初来日するレオナルド・ダ・ヴィンチの『女性の肖像』、通称『美しきフェロニエール』は、人間の個性への関心が高まった時代であるルネ
サンスの肖像芸術の傑作だ。レオナルドの作品は、真贋を問わず数えても18枚には届かないであろう。その1枚が東京にやってくる。これもチケット争奪戦は必至であろう。
東京には、無料で見られる名画や傑作オペラ上演の宝庫である。有名だから?人気があるから?ということで、人の後追いをするのではなく、自身の感性アンテナに正直に心を寄り添
わせてみてはいかがだろうか?きっと素晴らしいアートが心を潤わせてくれることだろう。
Art booms and dark shadows:
why japan fixates on household names.
In September, Vermeer’s “Girl with a Pearl Earring”—the “Mona Lisa” of the North— arrived in Osaka, sparking a ticket frenzy.
Once known simply as “Girl with a Blue Turban”, it was obscure in Japan, and Vermeer himself was forgotten for 200 years. Initially sold for roughly 13,000 yen in today’s money, 19th-century restoration and a hit novel transformed it into a masterpiece where even a brief glance is now a rarity.
The Mauritshuis in The Hague lent “Girl with a Pearl Earring” abroad during a full renovation; it will likely never return to Japan in my lifetime. Meanwhile, “La Gioconda” (“Mona Lisa”) will soon move to a dedicated room in the Louvre, requiring an extra fee beyond general admission. I recall hosting a private dinner directly before “La Gioconda” after closing hours years ago—an unthinkable event today.
Without complaining, Tokyo overflows with world-class art that often goes unnoticed, including incredible masterpieces by Seiki Kuroda and Tsuguharu Fujita. After all, Tokyo was the only place “La Gioconda” was ever exhibited outside the Louvre.
Introducing obscure masterpieces rarely captures immediate interest. Forgive my cheeky intent to instead point you toward landmark exhibitions and send you into the crowds.
First, “Joy of Life: Masterpieces from the Musée d’Orsay” at the Tokyo Metropolitan Art Museum brings Jean-François Millet’s “The Gleaners” alongside works by Claude Monet.
Additionally, Leonardo da Vinci’s “La Belle Ferronière” makes its Japanese debut at “The Louvre Museum Exhibition: Renaissance.” A masterpiece of Renaissance portraiture, Leonardo’s surviving works total fewer than eighteen; having one in Tokyo makes another fierce ticket battle inevitable.
Tokyo is a treasure trove of free masterpieces and opera. Rather than following the crowd because something is famous, tune into your own aesthetic sensibilities and let art enrich your soul.


左)当時のオランダには無い異国情緒のターバンを金よりも高価なラピスラズリーを砕いた
絵の具(ウルトラマリンブルー)が使われている。修復を経て、真珠、唇に光沢が復活した。
右)ミレーの傑作:『落穂拾い』は、写実主義画家のミレーが、
最下層農民の現実を見事に描き、祈りの深さを感じさせてくれる。
東京都美術館開館100周年記念
オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び展
場所:東京都美術館
《2026年11月14日(土)より開催 》
ミレー『落穂拾い』、ファン・ゴッホ『星月夜』、ゴー
ガン『アレアレア』およびモネやルノワールの作
品を含む約110点 が一堂に会する。
