アートに暮らす。
アートに暮らす。
日々に楽しみや深み、美味も与えてくれる、そんなアートの話。
投資の対象になるアートが話題になり、ビジネスに活かせるアート志向などといった記事が多く見られるこの頃。確かにそれらもアートの価値ではあるが、でもちょっと違和感をおぼえる。芸術とは、などと難しいことはいいたくないが、それでも芸術はそれ自体が、人生や暮らしを豊かにしてくれるものであると信じている。だからこそ、何万年も前にクロマニョン人により描かれたラスコーの壁画からいままで、絵(アート)は人の心をつかんできた。1枚の絵、一冊の美術書、そして想像力に満ちた食もまた芸術!知的好奇心を探究する「yoff」の創刊号となる今号では、アートに暮らす歓びや楽しさをピックアップして皆さんにお届け。さぁ、アートとともにある豊潤な日常へ出かけましょう。
VOL.2
アートに暮らす。
ロメロ・ブリット 幸せを誘うアートを部屋に。
Feature | 2024.02.22
自分の感性でアートを選ぶ人が増えてきた。
キレイ、面白い、ハッピー! その絵は多くの人を惹きつける。
ME
Romero Britto
ロメロが若い時期は貧しく、 キャンバスを買うお金もなく、このように新聞紙に好きな絵を描き続けていました。その頃へ郷愁を感じさせる秀逸の一品です。
Romero was poor in his youth, lacking even the money to buy canvases, so he continued to draw his artworks on newspaper. This excellent piece evokes nostalgia for that time.
- Size(HxW): 71cm x 61cm (シートサイズ)
- Edition Size : 50
「みる人をハッピーにする」、それがロメロ・ブリットの絵。カラフルな色彩と軽やかなタッチで、古典芸術もポップに表現。もちろんオリジナルも楽しい。部屋に飾ればそこから幸せのオーラが広がっていく。
いま、最も勢いのあるアーティストといわれているロメロ。その人気を証明する逸話をいくつかご紹介しよう。
2021年、世界最大といわれている6万スクエアフィートもの広大なアトリエがマイアミに完成。そのときホワイトハウスにはお祝いの星条旗が掲げられ、しばらくしてからその旗とともに賞状がロメロに贈られた。
これはアンディ・ウォーホルやキース・ヘリング、バスキアがいなくなったポップアート界で、彼らにかわるアーティストであるとアメリカが認めたということ。さらに、イスラエル政府はロメロの功績を称え「ロメロは我が国の友人」というメッセージとともにアーティストとしては初の勲章を授与。また、イギリス王室やスウェーデン王室との交流をはじめ、世界のセレブリティから肖像画を依頼されていることからも注目度の高さがうかがえる。
人を幸せにしたいという 純粋な想いを表現することで、絵の価値がどんどん上がっていく。ロメロ・ブリットの柔らかな眼差しが、世界を温かく包み込もうとしている。
“Romero Britto’s art brings joy with vibrant colors and a playful touch, transforming classical pieces into pop art. His original works, just as lively, infuse rooms with happiness.
As a leading artist today, Romero’s popularity is evident in the following anecdotes.
In 2021, Romero’s 60,000-square-foot Miami studio, reportedly the world’s largest, was finished. The White House raised the Stars and Stripes to celebrate,
later gifting him the flag and a certificate recognizing him as a successor to Andy Warhol, Keith Haring, and Basquiat in the art world. Furthermore, in recognition of Romero’s achievements, the Israeli government awarded him a medal, the first ever given by the state to an artist, along with the message that “Romero is a friend of our country.” His interactions with the British and Swedish royals and portrait commissions from global celebrities further underline his fame.
Romero Britto’s art, embodying the desire to spread happiness, continually gains value. His warm gaze embraces the world.
ROMERO BRITTO
ロメロ・ブリット(Romero Britto、1963 年10月6日生まれ) ブラジル出身。
アメリカのマイアミを拠点に活躍しているアーティスト、画家、セリグラファー、彫刻家。
彼は作品にキュービズム、ポップ アート、 グラフィティペインティングの要素を組み合わせ、希望、夢、幸福の視覚的表現として鮮やかな色と大胆なパターンを使用しています。
Romero Britto, born on October 6, 1963, is a Brazilian-born artist,
painter, serigrapher, and sculptor based in Miami,USA.
He combines elements of Cubism, Pop Art, and graffiti painting in his works, using vibrant colors and bold patterns as a visual expression of hope, dreams, and happiness.
1枚のアートを飾ることから居住空間を仕立てていく。
GOLDEN HAT
Romero Britto
- Size (H x W): 51cm x 38cm (シートサイズ)
- Edition Size : 45
BRAZILIAN AMAZON
Romero Britto
- Size (H x W): 38cm x 61cm (シートサイズ)
- Edition Size : 180
「日本には、どんなに素敵な家具があっても壁は真っ白というお宅が多くあります。海外では必ず絵や写真が飾ってあります。部屋をつくるとき、まずはお気に入りのアートを飾り、それに似合った色合いやデザインのインテリアを決めていくこともある。豊かな生活は、1枚の絵からはじまります」。そう語るのはロメロ・ブリットの作品を扱うホープベアーの原田ひとみさん。
「ロメロのテーマは、愛や喜び、希望。そんな作品に惹きつけられるように、ふらっとギャラリーに入ってきた人が、“元気になる” “明るい気分になれる” といって絵を購入される。アートに詳しくなくても、素敵とか好きというインスピレーションで買ってもいい。そう思わせてくれるのがロメロ・ブリットの作品なのです」。難しいことを抜きにして、純粋にアートを楽しむ。その入口にロメロの作品がある。
“In Japan, homes often have plain white walls, despite beautiful furniture. Abroad, walls are typically adorned with art and photos.” Hitomi Harada from HOPE BEAR, a dealer of Romero Britto’s works, suggests starting room decor with beloved art, then selecting matching colors and designs, asserting that a rich life starts with a single painting. “Romero’s themes are love, joy, and hope. Drawn to such works, casual gallery visitors often end up buying a painting because it ‘lifts their spirits’ or ‘brightens their mood.’ You don’t need to be an art expert to buy something for its beauty or appeal. Romero Britto’s works inspire these feelings in people.”
It’s about enjoying art purely, without overthinking, and Romero’s works are a gateway.
BIG DREAM
Romero Britto
「BIG DREAM」は、 ダイヤモンドダストをあしらったキャンバスの限定版画です。カラフルで鮮やかな作品は、2人の奇跡的な出会いを祝福している作品です。ブリットはこの作品にストリートアートの要素を取り入れ、彼のアートを新鮮で自由な視点に変えています。
“BIG DREAM” is a limited-edition print on canvas with diamond dust embellishments. A colorful and vibrant artwork made to celebrate that beautiful chance of life bringing two people together, and with elements of street art Britto transforms his contemporary artinto a fresh, free flowing perspective.
- Size(HxW): 76cm x 102cm (シートサイズ)
- Edition Size : 90
TIFFANY’S
Romero Britto
「TIFFANY’S」は、ダイヤモンドダストをあしらった限定版画です。ティファニーブルーを思わせる背景で、白と黒のラインがまたそのブルーの美しさを際立たせています。ミニマリズムの優雅さと美しさにインスパイアされた作品です。
“TIFFANY’S” is a limited-edition print on paper with diamond dust embellishments. It is rendered on a beautiful Tiffany Blue background and adorned with lines in white and black. This piece is inspired by the elegance and beauty of minimalism.
- Size(HxW): 76cm x 61cm (シートサイズ)
- Edition Size : 90
PINK ELEPHANT
Romero Britto
ロメロの大好きな動物の一つである「象」。 二次元、三次元の作品で数多く制作しています。 “安定と信頼”、”勇気と誇り”を象徴する象の作品は重宝されます。
One of Romero’s favorite animals is the “elephant,” and he has created numerous artworks of elephant in both two-dimensional and three-dimensional forms. His elephant pieces, symbolizing “stability and trust” as well as “courage and pride,” are highly valued.
- Size(HxW): 89cm x 73cm (シートサイズ)
- Edition Size : 199
ホープベアー株式会社は、欧米においては既に絶大な人気と高い評価を得ているロメロ・ブリット作品を全世界に展開しているBRITTO CENTRAL社(本社:米国マイアミ)公認の総代理店です。日本の皆様にも、是非ロメロ・ブリットの“愛と希望、思いやりと楽天主義”に溢れる作品に接していただきたいと思います。
私たちは、肩書きや実績に捉われず、人々に愛と夢と希望を与えるハートウォーミングをテーマとした作家、作品を紹介し続けることを通じて、夢のある明るい世界を築く事に多少なりとも貢献できればと切に望んでおります。
原田 ひとみ
さん
ホープベアー株式会社 取締役経営企画部長
大手インテリア販売会社に勤務後、ロメロ・ブリットの作品を扱うホープベアー社に入社。銀座にある、気軽に立ち寄れるショップのようなギャラリーで、アートのある素敵な生活を提案。近頃は若いお客様や外国人観光客が増えて、ますます楽しさと活気が増してきたという。
「Be happy ! ロメロ ブリット来日展」
2024.4.2(tue) ~ 4.7(sun)
4月にロメロ ブリットが来日!伊勢丹新宿店にて150点以上のロメロ ブリット作品を展示販売します。
伊勢丹新宿店 本館6階 催物場 2024.4.2(火)~4.7(日)
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目14-1 10:00~20:00(4月2日は16:00、最終日は18:00まで)
【作品に関するお問合せ】
ホープベアー株式会社
03-6264-5123
customer@hopebear.shop
https://hopebearinc.com/contact/
Photogallery
暮らしが深まるアートを本棚に。
Feature | 2024.02.22
本棚にある写真集や画集をめくれば異世界が現れる。
広く、深く、日常を演出してくれるアートブックとの出会い。
田中麻記子 Makiko Tanaka『Vu Vu』
あなたの本棚には、どんなジャンルの本が並んでいるだろうか。純文学があったり、ノンフィクションがあったり、ビジネス書があったり。文字が詰まった左脳に訴えかける書物が並ぶなか、絵画や写真で右脳を心地良く刺激してくれる棚があると、なんだかホッとする。手に取って開く。ひと目で、一瞬で、別世界へと連れていかれる。さらにページをめくれば、その世界はどこまでも、果てしなく続く。そのとき人は、イマジネーションという翼を広げ、大きく羽ばたいている。
今回、素敵なアートブックをキュレーションしてくれるのは、芸術系の出版などをおこなっている「HeHe(ヒヒ)」。
あなたの美意識に触れるのは、どの一冊?
What types of books are on your shelves? Pure literature, nonfiction, business books? Amidst these text-heavy, left-brain books, it’s comforting to have right-brain stimulating works with paintings and photographs on your shelves.Open one of these books and a single glance transports you to another world. As you turn the pages, this world extends infinitely, and your imagination spreads its wings and soars. The books featured here, curated by HeHe, known for their art publishing, invite you to discover which ones appeal to your aesthetic sense.
菅木志雄 Kishibo Suga『制作ノート 1967-2008』
荒木経惟 Nobuyoshi Akira『センチメンタルな旅 1971-2017』
デニスモリス Dennisu Morris『Colored Black』
アートの出会い方、選び方、楽しみ方。
田中麻記子 『 Black Hawaii 』
昼と夜、あわいの時間にだけ立ち上がる夢物語。カラフルでキュート、ダイナミックな絵が人気を集める田中麻記子が描き出したもうひとつのハワイ。トム・ウェイツやエルビス・コステロとも交流のある、世界的ギタリスト、マーク・リボーが、この本のために書き下ろした新曲2曲を収録した、レコード付きスペシャル作品集!
久家靖秀 『Mnemosyne 』
美術家の制作現場を撮影した写真集「Atelier」の発表から10年、写真家・久家靖秀は二人のパフォーマー〈砂山典子(ダムタイプ)、池宮中夫(ノマド-s)〉に出会い、このシリーズ制作ははじまりました。身体表現を生成する瞬間を絵画的に変換する「Mnemosyne(ムネモシュネ)」は、裸体の記憶を過去から未来まで自由に横断します。[Mnemosyneとは、ギリシャ神話に登場する記憶の女神であり、ミューズの母親]
鈴木ヒラク 『SILVER MARKER』
「ドローイング」を絵と言葉の間にある線の「発掘」行為と捉え、多岐に渡る手法によってその可能性を拡張し続けている鈴木ヒラク。これまでに国内外の美術館での展覧会参加はもとより、大規模な壁画制作や、詩人/音楽家らとのパフォーマンスなど、様々な領域を横断しながら独自の世界を探求してきました。
『SILVER MARKER』は、この活躍目覚ましいアーティストの10年間に渡るドローイングの軌跡を収めた、渾身の作品集です。
内藤礼 『うつしあう創造』
小さなひとが立ち、水が落ちるところに大地が広がり、糸やリボンが揺れるときに風が生まれ、ビーズやガラスが光をまねき入れる。内藤礼は、空間と対話しながら自然のエレメントや繊細なモチーフを組み合わせ、またカンヴァス上に淡い色彩を重ねることで、根源的な生の光景を出現させてきました。『「人(わたし)が作る」を超えること』を問い続けてきた作家が、はじめて「創造」と向き合った展覧会「うつしあう創造(金沢21世紀美術館)」。それは人が自らを主体であると認め、人になろうとする行為だと作家はいいます。人と自然、わたしとあなた、生と死、内と外、そして人と作品のあいだに生じる移し、写し、映し、遷し。「うつしあう」両者のあいだに顕われる生気、慈悲、それらとの一体感のうちに、生へと向かおうとする「創造」の瞬間がそこには満ちていました。本書は、畠山直哉の撮影により、大小さまざまな展示室や光庭、それをつなぐ通路によって構成される作品空間と、日中の自然光から、明かりが灯る夕刻以降へのうつろいをも追体験できる、贅沢な作品集です。
近藤恵介 冨井大裕 『あっけなく明快な絵画と彫刻、続いているわからない絵画と彫刻』
日本画家・近藤恵介と美術家・冨井大裕、2人の作家により2010年に制作された共作《あっけない絵画、明快な彫刻》シリーズは、2013年に川崎市市民ミュージアムで再展示され、その後、同館に寄贈されましたが、令和元年東日本台風(2019年)によって収蔵作品7点すべてが被災しました。現代美術の修復というあまり例のない状況を経て、2023年3月、川崎市市民ミュージアムWEB上で展覧会を開催。本書は、作品の修復過程を追いながら、以前のかたちを失ってしまった作品の新たな展開と、その経験をふまえて制作された新作、その経緯と心情の記録をまとめた一冊です。
藤田はるか 『winter』
喧騒のなかで忘れ去られた、それぞれの時間。その場所に立てば、冷たい足元の下に固く埋もれる、幾層にも重なり合って眠っている歴史の残骸を感じる。2013年に故郷・東北を撮影した写真集『いくつもの音のない川』を発表した藤田はるかが、その以前から10余年もの間、場所を特定せずに、ただ、雪に魅せられ、撮り続けてきた景色。ここは誰のものでもなく、同時に私だけのものでもある、そんな新しい繋がりを呼び起こします。田中義久のブックデザインにより、まるで雪のなかを迷いながら、すべてに包み込まれるような読書感覚を持つ、真っ白で美しい写真集。
HeHe
/ヒヒ <出版元>
2014年より、東京を拠点にアートブックの出版を中心に、編集、展覧会の企画などをおこなう。菅木志雄、内藤礼、大竹伸朗、鈴木ヒラク、マーク・マンダース、ライアン・ガンダーなどの現代美術家の作品集や、荒木経惟、川内倫子などの写真集を出版。他にヨーガン レールやイッセイミヤケなどのファッションデザイナー、浅野忠信の画集やチバユウスケの詩集など多ジャンルに展開。自身のレーベルでの出版のほか、藤田嗣治展などの美術館図録の編集も手がける。
優雅なる、日常を。
トヨタホームが贈る都市型邸宅の最高峰「エスト」シリーズ
トヨタホームの都市型邸宅の最高峰『エスト』シリーズ〈トヨタホームエスト深沢〉
詳しくは公式ホームぺージをご覧ください。
https://www.toyotahome.co.jp/bunjo/town/
美味なるアートを追い求めて。
Feature | 2024.02.22
美味しい料理をつくるのに欠かせないのが想像力。
豊かなイマジネーションはひと皿のアートを創りだす。
藤田の写真にインスパイアされてつくられた松井の“目玉焼き”を藤田が撮った(下記の“牛の昆布締め”も)。イマジネーションが連鎖した写真。
あるものを想い、それを表現する。アートの制作過程はそのまま、料理づくりの過程になる。では、こんな試みはどうだろう。料理家が一冊の写真集を手に取り、そのなかの作品にインスパイアされたとき、そこからどんな料理が生まれるのか。写真から写真でも、写真から絵でもなく、写真から料理をつくる。そんな突拍子もない提案を楽しそうに受けてくれたのが料理家でありアートディレクターでもある松井まり子。
彼女が選んだのは写真家 藤田はるかの作品。そこにあるのは、装飾的なものを極限まで削ぎ落としながら、耳を澄ませばさまざまな自然の音が聴こえてきそうな、静寂と豊穣さを感じさせる世界。それに松井は、無駄な味を省くことで生まれる豊かな味わいで応えようとした。
藤田の写真にインスパイアされて生まれた料理は、シンプルに、“目玉焼き”。ただ、そのレシピが普通とは違う。まず、卵白と卵黄を分け、卵白に空気を含ませながら混ぜる。そうしてメレンゲ状になったものを熱したフライパンへ流し、その上に卵黄を落とす。「卵料理は料理の原点。フレンチでも、卵に始まり卵に終わる、といわれています。藤田さんの写真からは、原点や原初というイメージが湧き、そこから奇をてらわない美しさを表現したいと想い、このように目玉焼きを再構築してみました」と松井は語る。さらに色合いや器にもこだわり、それらを含めてひとつの作品となっている。
味は、驚くほど豊か。さくっとした食感の後、口のなかでとろっととろける。そこに塩で引き立てられた卵黄の旨味が乗り、複層的な味覚が広がる。シンプル、なのに深みがある。なるほど、藤田の写真のような味がした。
Imagine and create. The artistry in cooking parallels that of creating art. Consider this experiment: a chef, inspired by a photograph in a book, crafts a dish mirroring that inspiration. Not a photo from a photo, nor a painting from a photo, but a culinary dish from an image. Chef and art director Mariko Matsui embraced this unusual challenge with gusto.
She chose the works of photographer Haruka Fujita. These works, which eschew decorative elements to the extreme, evoke various sounds of nature if one listens carefully, conveying a world of tranquility and abundance. Matsui sought to replicate this essence by pursuing rich taste through the elimination of superfluous flavors.
Inspired by Fujita’s photography, Matsui crafted a unique “fried egg.” She began by separating the egg white and yolk, whipping the white until fluffy. Then, she poured the meringue-like white into a hot pan, gently adding the yolk on top. “Egg dishes are foundational in cooking. The French say that everything starts and ends with an egg. Inspired by Fujita’s themes of origin and simplicity, I reimagined the fried egg to capture this unadorned beauty,” Matsui explains. Her attention to color and dishware elevates the dish into a complete artistic expression.
The flavor is unexpectedly rich, starting with a crisp texture followed by a smooth melt in the mouth. A hint of salt enhances the egg yolk’s umami, adding a complex layer of flavor. It’s simple yet profound, reminiscent of the essence in Fujita’s photographs.
藤田はるか Haruka Fujita 『winter』より
枯山水にある滋味深い味わいを表現した牛の昆布締め。
松井が2つめに選んだのは、印画紙に写り込んだような花の写真。そしてつくられたのが “牛の昆布締め”。これは松井のシグネチャー的な料理だという。「徳島県の薬王国分寺の境内にある阿波国分寺庭園に行ったとき、その枯山水に圧倒されました。阿波の青石が豪快に組まれた庭園は、無骨なのに繊細で儚く、美しかった。そのイメージを料理に表現したのが“牛の昆布締め”です。この料理にあるのは、マイナスの美学。無駄を省いた先にある美味しさです。牛肉を昆布で締めて焼いただけですが、肉のイノシン酸と昆布のグルタミン酸が掛け合わされ、美味しさが2倍にも3倍にもなる。無骨なのに旨く、栄養もある。藤田さんの花の写真にも儚さとともに豊かな滋味のようなものを感じ、そこからこの“牛の昆布締め” が似合うかなと思いつくりました」。そう語る松井にとって、料理とアートは同義語となっている。
Matsui’s second inspiration came from photographs of flowers that looked as if transferred to printing paper. This inspired beef kombu-jime, one of her signature dishes. “Visiting the Awa Kokubunji Garden at Yakuo Kokubunji Temple in Tokushima, I was awestruck by the rock garden. Its bold Awa blue stones crafted a landscape that was rugged, yet delicate and transiently beautiful. My beef kombu-jime is a culinary interpretation of this garden. The dish is a study in minimalist aesthetics, finding beauty in simplicity. By curing beef in kelp and grilling it, the meat’s inosinic acid and the kelp’s glutamic acid merge, enriching the flavor two or threefold. It’s a dish that’s robust yet delicate, rich in both taste and nutrition. Fujita’s floral photography, with its ephemeral richness, was the perfect trigger for creating beef kombu-jime. “ For Matsui, the parallels between cooking and art are clear.
藤田はるか Haruka Fujita 『torikumo』より
藤田 はるか
Haruka Fujita
<写真家>
宮城県仙台市生まれ。1998年、渡英。現在、東京を拠点に活動中。
主な展示に、個展(1998年/仙台私立現代美術館)、「いくつもの音のない川」(2013年/AL・東京)(2020年/WATERMARK arts&crafts・東京)、
東日本大震災のチャリティー・グループ展「sowing seeds」(2013年/ノルウェー、オスロ)、「winter」(2015年/YKG・東京)(2020年/BOOK AND SONS・東京)、「torikumo」(2023年/BOOK AND SONS・東京)(2023年/LIBRIS KOBACO・福岡)など。
写真集に『いくつもの音のない川』(2013年/私家版)、『winter』(2015年/HeHe)、『111l』(2020年/私家版)、『torikumo』(2022年/HeHe)。
・Instagram : fujitaharukaphoto
・web : https://www.fujitaharukaphoto.com/
松井 まり子
Mariko Matsui
<料理家>
株式会社De-De
Senior Art Director/Graphic Designer/Foods Stylist
1994年渡米、大学でグラフィックデザインを学びBachelor of Fine Art(美術学士)を取得。ニューヨークでローカルタブロイド誌の広告制作を経て2002年に帰国。広告制作会社を経て2015年独立。アートディレクター、フードスタイリストとして活動する傍ら2024年にはDe-De GYOZAもスタート。
・Instagram : marikomog
・web : http://de-de.co