ジャマイカ編
dumplings|2026.8.20

「旅する餃子」ジャークチキン餃子 ライス&ピーズを添えて~ジャマイカ編。
カリブの青い海、山から吹く風、街を揺らす低いベース音。
苦い歴史を、音楽と笑いに変えてきた島。
さて今回は、ジャマイカの音と熱を餃子に包んでいく旅。

木と水の島に流れる、反骨のリズム。
ジャマイカに着くと、海より先に音が聞こえてくる。車の窓から漏れるレゲエ、道端のスピーカーから響くダンスホールのビート、クラクションまで妙にリズミカルだ。背後にはブルーマウンテンの深い緑。先住民タイノ族の言葉で「木と水の地」を意味するという島の名は、なるほどと思わせる。
けれど、この明るさは、のんびりした南国気質だけでできたものではない。スペイン、イギリスの植民地となった時代。山へ逃れ、自由を守るために戦ったマルーン。1962年の独立まで、この島は長く支配される側の歴史を歩いてきた。
1930年代に生まれたラスタファリも、そんな歴史から立ち上がった宗教・社会運動だ。ドレッドヘアや赤・黄・緑の色だけがラスタではない。アフリカへの回帰を掲げ、自然に近い暮らしを求め、植民地主義や人種差別に抗う。その声を世界へ運んだのが、ボブ・マーリーだった。「One Love」と歌いながら、彼は愛だけでなく、自由と連帯をメッセージした。レゲエは踊るための音楽であり、社会の周縁に置かれてきた人びとの言葉でもあった。
いくつもの文化と記憶を混ぜ、新しいリズムをつくる。ジャマイカの食も、どこか似ている。タイノ、アフリカ、ヨーロッパ、インド、中国。さまざまな味がひとつの鍋に入り、そこへ島の唐辛子と香草が加わる。
次は、その熱を餃子の皮へ。
Rebellious rhythms flowing on the island of wood and water.
Arriving in Jamaica, sound hits before the sea—reggae, dancehall beats, rhythmic horns, framed by Blue Mountain greens. The Taino name “land of wood and water” makes sense.Yet this brightness stems from more than tropical ease. Spanish and British rule, Maroons fighting for freedom— Jamaica walked a long history of oppression until 1962 independence.
Rastafari, born in the 1930s, rose from this history. Bob Marley carried its voice, singing “One Love” for freedom and solidarity. Reggae was music to dance to, but also a voice for the marginalized.Blending memories to create new rhythms— Jamaican food is similar. Taino, African, European, Indian, Chinese flavors mix with local peppers and herbs. Next, wrapping that heat into a dumpling skin.




煙と辛さを包んだ、ジャークチキン餃子。
ジャークは、先住民タイノの調理法とマルーンの食文化が重なって生まれたとされる、ジャマイカの代表料理。肉にオールスパイスやタイム、唐辛子をすり込み、本来はピメンウッドで蒸し焼きにする。甘い香りのあとから辛さが追いかけ、最後に煙の味が残る。今回は、そのジャークチキンを焼き餃子に仕立てていく。
①小麦粉、ターメリックパウダー、塩に水を加え、こねて皮をつくる。
②鶏ひき肉と粗みじん切りした鶏もも肉、刻んだ玉ねぎ、青ねぎ、にんにく、生姜、オールスパイス、タイム、チリパウダー、クミンパウダー、ライム果汁、醤油、塩、ブラックペッパーを加え、よく混ぜて味をなじませる。
③皮で餡を包み、フライパンで焦げ目がつくまで焼く。
④米、レッドキドニービーンズ、にんにく、塩をココナッツミルクで炊いたライス&ピーズとともに盛り、ライムを添える。
さて、お味はいかがでしょう?
まず来るのは、オールスパイスの甘く深い香り。続いて鶏肉の旨み、唐辛子の熱、ライムの酸味。ターメリックを練り込んだ皮は、こんがりと焼けると香ばしさを増す。ライス&ピーズが辛さを受け止め、もうひとつ、もうひとつと箸が進む。カリブの太陽より、少しだけ熱い餃子が楽しめた。
Jerk chicken gyoza, wrapping rich smoke and sharp heat in a crispy dumpling skin.
Jerk combines Taino and Maroon heritage. Spiced with allspice and herbs, smoky chicken with sweet heat is wrapped into crispy pan-fried gyoza.
①Knead flour, turmeric, salt, and water into dough.②Mix minced and chopped chicken, onion, scallion, garlic, and ginger with allspice, thyme, chili, cumin, lime juice, soy sauce, salt, and pepper.③Wrap filling in dough and pan-fry until browned.④Serve with Rice & Peas and lime.
Now, how does it taste?First comes the sweet, deep aroma of allspice, followed by savory chicken, chili heat, and bright lime. The turmeric-infused skin adds rich nuttiness when pan-fried. Rice & Peas tempers the spice, keeping your chopsticks moving. Pure Caribbean heat in a dumpling.

《料理家》 松井まり子 Mariko Matsui
株式会社De-De
Senior Art Director/Graphic Designer/Food Stylist
アートディレクター、フードスタイリストとして活動する傍ら2024年にはDe-De GYOZAもスタート。

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